« スカラ座の行方… | メインへ戻る | ラジオでオペラ12:よっしゃあ、スカラ座!『エレクトラ』 »

2005年05月03日

路地の奥には……

あやしい……まだ、私がモデナに住み込む前のお話です。
当然、何回かこの街を訪ねた訳ですが、兎に角、初めて行く街は、歩き回らないと気が済まない。色々探検?しているうち、チェントロ*に細い路地を見つけました。

モデナは、小さい街です。そして、とても安全です。
が、この通りからは、なぜか危険な感じが…。

歩いて行くと、そこにあるのはホテル等のガレージの入り口と、倉庫の扉らしきもの、石畳。 見えるものといえばハトの糞ばかり…。 ちょっと、怖い感じがします。

そして、その道は行き止まりだったのです、が… 道の奥の奥、右側の壁沿いに、ワインの空瓶を発見!!

「何かの…メシ喰い処…だな?!」

人通りも無く、訊く当ても無ければ、確かめる手段もありません。
また、誰も居ない行き止まりのこの道で、誰かに襲われでもしたら、逃げようが無いではありませんか。

そそくさと、その場を後にして、その日は終わってしまいました。

それから、時は過ぎ、たまたま、ミラノの友人がモデナに来た時、丁度食事時だったので、例の道の奥を覗きに行かないか、と誘ってみました。道の入り口まで来ると、その友人は

「えっ?!…ここ?」

そうだ、と答えて、数歩、道に入りかけると、友人は

「ちょっ、ちょっと!辞めよう。怖いよ、変だよ、この道!」

そう、確かに、怖い。 モデナの歴史的中心街の、ど真ん中にありながら、周りにあれだけ人通りがありながら、ここだけは全く人通りが無く、ぽっかりと、周りから抜け落ちてしまったかの様です。
またも私の探索の結果は出せず仕舞いでした。

奥へすすんでいくと……そしてまた、数年が経ち、その時は既に、
同じくモデナ在住の goloso**な日本の方「S氏」とも、友人となっておりました。

そしてある日、S氏が私に曰く、

「Mamoruさん!チェントロに、すっっっごく美味しいお店があるらしいんですよ!!
なんでも、人通りが少なくてちょっと怖い様な道があって、その奥にあるんだとかで…。」

「…そこ、知ってる!」

「えっ?ほんとに??   そこねぇ、ゲットーの跡らしいんですよ。」

「なるほど! すんごく、雰囲気が変なんですよ。
 前にね、他の友人と行こうと思ったら、その友人が道に入った途端、怖いから嫌だ…って言い出しちゃって。だから、まだ行った事が無いんです。」

行きましょう!Mamoruさんっ!お供しますよっ!!」

善は急げ…で、あっと言う間に話はまとまり(これって善ですよね?)、2人は例の道の入り口に立っておりました。

「ね?…凄い道でしょ?」

「こりゃ、ちょっと1人じゃちょっと…。
 ボクもモデナは長いですけど、こんな道があるとは、知りませんでしたよ。それも、こんなチェントロに…。」

兎も角、食の誘惑に弱いです(私ではありません)。ずんずんとその道を奥へと進んで行きました。

やっと、行き止まり近くまで来ると、前には締まっていた鉄格子も開いていて、右の壁の扉の中には、人の気配もします。
おそるおそる、扉を開けてみると…。

小さいスペースには、テーブルが4つ。
その時は他の部屋があるのだろう、と想像しましたが、本当に4つしか無かったのでした。

そして、大きなお腹をしたシニョーレが、

「ボンジョールノ!」

と声を掛けて来ました。
こちらが2人だと言う事を告げると、入って左手前のテーブルに通されました。

この店の名前は、『ジュスティ』。
アクアパッツァのシェフ、日高さんモデナの「バルサミコ酢祭り」に招かれた時に、来ているお店です。

また、この店にとっては裏にあたる、表通り側にもお店を出していました。
ただし、表の顔は、お肉屋さん…と言っても生ハムとかサラミ…まあ、早い話が高級食材専門のお店で、ワインとバルサミコ酢も扱っています。(そのバルサミコ酢のラベルには “GIUSTI” と名が入っていて、有名で日本にも輸入されています。)

そして私達が店に入った時、対応に出て来たお腹の大きいシニョーレがご主人(Adriano "Nano" Morandiさん)、奥様(Laura Galliさん)が裏のレストランの厨房を取り仕切っています。

奥方は料理が得意で、旦那はワイン通…となれば、レストランを開いて奥様ご自慢のお料理を食べてもらいたい、というのはイタリア男性の理想なのかもしれません。(モデナだけなんだろうか??)
だから、テーブルの数も4つだけ。そしてお昼だけの営業。

そして、その料理は…エミリア料理であるのは勿論ですが、とっても上品。
私が知っているモデナ料理店の中でも、もっとも洗練された皿を出すお店の1つです。

特に絶品だったのが、baccala'(干鱈のペースト状にしたものポレンタのフライ添え)初めて食した時は、もう、笑うしかありませんでした!
もう、頬が上がって目尻が下がって… 本当に美味しいものに出会うと、人は笑うしかないんですね。

この料理、魚だからセコンド・ピアット(第2皿)だと記憶してしまって、その後、違う友人と行った時、セコンド・ピアットのリストに無かったので、

「あれ、バカラは?」と訊いたら、

「え?!あ、それ、アンティパスト(前菜)だよ!…あ…あぁ、言うの忘れちゃったな!」

と、注文したセコンドの他に、バカラを作って持って来てくれました。(笑)

それから、ドルチェ(デザート)のブリュレ(木いちごやブルーベリーののった焼きプリン)!!!
「うふふふ…」あぁ、もう顔が戻せない!(常にある訳ではありませんよ、このブリュレ。)

107-0775_IMG.jpgそれから、このお店のカンティーナ(酒蔵)、実はモデナのレストラン中、最高のカンティーナの1つらしいです。
初めてこの店を訪れた時、隣のテーブルのアメリカ人に、旦那さんがとあるワインを薦めていたのですが、それがモデナにあるまじき値段!!!
goloso なS氏と、顔を見合わせて「わお!」
まるで、ミラノの5つ星レストランに来てしまったかの様な錯覚に陥ります。

しかし、ここの旦那さんのオススメしてくるワインは、確かに美味い!
赤ワインと違い、白ワインは長く寝かせるのは難しいそうですが、とった白ワインは長く寝かせてありながらバッチリでした。
白が大丈夫なのですから、赤は推して知るべし!です。

それから、ジュスティの製品が、色々な国へ輸出されているせいか、旦那さんが英語を話します。
ただし、メニューはありません。奥様がその日、作れるメニューを、口頭で説明してくれるのみです。

ワイン・リストもありません。これも口頭で、予算をいえばお薦めを出してくれます。
ただ、頼めばカンティーナに入れてくれると様です。そこで、気に入ったのを頼む事も出来るでしょう。
客も相当の強者である必要がありそうですが。

そして、このレストランは時間が掛かりますので、時間のない方、せっかちな方は、無理です。
前菜からプリモ、セコンド…ワインも白から赤、最後にはグラッパ等で締めるまで、ゆっくりですが、しっかり、たっぷり食べて、飲んでゆきます。
お腹の容量の方も、それに見合うものが必要です。

あるときは、最後のカフェを取って外に出ると、とっぷりと日が暮れており、辺りは既に暗くなっていました。

「あぁ、これがイタリアの食事…。」

夕方おそーくなってしまった私たちが、シェフに外へ連れ出してもらえたのは、リストランテにとっての裏口、実はこの食料品店の 表玄関だったのです。


注:
*  チェントロ:中央/中心街/旧市街のこと
** goloso:形容詞/喰い意地の張った、食道楽の
    名詞/大食漢、健啖家

お店のデータ:
店名:RESTAURANT Hostaria Giusti
住所:Vicolo Squallore, 46 enter through Giusti grocery at Via Farini, 75 Modena
電話:+(059)-222-533
予約:必須(それも 1週間前じゃとれないことしょっちゅう!)
営業時間:ランチタイムのみ営業
しあわせ度:★★★★★
イタリア度:★★★☆☆

日本語のメニュー:なし
英語のメニュー:なし ただし、英語は通じます。
イタリア語のメニュー:なし
そのかわりといっちゃなんですが、日本の雑誌がおいてあったりする。

(イタリア度とは、英語や日本語の通じない度/メニューがあるかないか、英語がついているか/日本人向けに作られているか 等の総合判断です。)

投稿者 Mamoru : 2005年05月03日 21:59

このページのトップへ

コメント

私は予約がとれるまで2年かかりました (;_;) 

でも、ほんっとにおいしかったです。
バカラの、すり身?なんだろう。 ポレンタのフライと一緒に食べると本当においしかったのが忘れられないです。

投稿者 A : 2005年05月08日 00:48

このページのトップへ